治療により改善する認知症(2) ―慢性硬膜下血腫―
軽い頭部外傷の後1~2ヶ月して、頭蓋骨の下にある硬膜(脳を包んでいる丈夫な膜)と脳の表面に血液がたまる病気です。原因は、一般的にはごく軽い頭部外傷後、脳の表面の静脈がきれて出血し、少しずつ貯まって大きくなり、「血腫」となります。血腫が大きくなると、脳が圧迫されて脳の機能が障害されて症状が出てきます。少しずつ血液が貯まりますので、ゆっくりと症状が出てきます。そのため1~2ヶ月してから(慢性)症状が出ることが多い病気です。
「ためしてガッテン」の番組では、この慢性硬膜下出血が認知症を起こす病気であり手術により劇的に治る病気として取り上げられていました。この硬膜下血腫は、はじめは無症状ですが、脳を圧迫するにつれて頭痛や半身麻痺、しびれ、言葉がうまくしゃべれない(失語)、意欲低下や痴呆などの精神症状などいろいろな症状がでます。特に高齢者では、脳萎縮があるため脳を圧迫して起こる頭痛や吐き気は少なく、痴呆などの精神症状、失禁、片麻痺(歩行障害)など認知症のような症状が起こりやすいのです。高齢者では、脳梗塞や認知症として扱われている場合が少なくありません。痴呆だけで発症する慢性硬膜下出血もあり、比較的急速に認知症の症状がみられた場合には、この病気を疑うことも重要です。なぜなら、手術により治療可能な認知症として注目されているからです。
診断は、これらの症状とCTやMRIによる画像診断により可能です。治療は、血腫が少ない場合は、自然に吸収することもありますが、症状が進んでいる場合は、手術でこの血腫(血のかたまり)を除去します。局所麻酔でできる比較的安全な手術です。
高齢者の認知症の患者さんの中に、この手術で治る慢性硬膜下出血という病気
があることを知ってください。
※マイタウン 2012年6月号掲載